【シノアリス】醜竜ノ在処 ~後編~ 【シナリオ】



醜竜ノ在処
~ギルド協力イベント~


後編






竜の一族が住む山に乗り込むと

多数の竜が待ち受けていた。

彼らはロ々に吼える。


「ピュートーンは渡さぬ!」

「奴は我々に必要な存在なのだ!」


「ソレなら何故、

彼を虐げてイタのデスか?」

「必要ナ存在を大切に扱わなかったノは

何故です力?」


問えば、竜達は大声で笑った。

「わからぬか?

それこそが奴の存在理由」

「奴は我々に虐げうれるために

生まれたのだ」



ーーこの山に住む我ら一族は、

古来よりストレスを溜めやすく

すぐに争いを起こす性質を持っていた。

そのため一族の半数が死に絶えるという

ことが、過去に幾度となくあった。


だから我々は、ピュートーンを作った。

一族全員が見下せて、好きにストレスを

発散させ、溜飲を下げるために作うれた


「絶対に

馬鹿にできる

下位の竜』


それがピュートーンなのだ。

だから勝手に出て行かれては困る。

わかったかね、矮小な人間よ。



竜の一族は、ピュートーンが居ない間に

溜め込んだ負の感情を爆発させた。


艦に閉じ込めうれたピュートーンは

為す術もなく悪意に晒される。


容赦なく浴びせうれる罵声、

絶え間ない暴力、嘲笑、侮蔑一一

暴虐の限りを尽くされ、二度と

逃亡できないように翼も折られた。


血と涙と汚物にまみれた艦の中。

ピュートーンは

朦朧とした頭で考えるーー



この世界のどこかには、ぼくが楽しく

暮ーらしていける場所があるはずなんだ。

だけど、もう翼が折れてしまったから

遠くには行けない。ぼくは疲れた。


決闘小屋に帰りたいよ。

あそこには、優しくしてくれる人がいた。

ぼくを嘲笑ったり

蔑んだりする人もいたし

毎日の決闘でたくさん怪我をしたけど、

ここよりはずっといい場所だった。


こんなところで死ぬくらいなら、

せめて決闘小屋で死にたいよ。

ぼくの居場所はきっと、あそこなんだ。



己を取り囲み、四方八方かう罵詈雑言を

浴びせる竜達をピュートーンは睨んだ。


「ぼくはもう一度、この山から出て行く。

邪魔をするなら戦ってみせる」

「貴様が戦う?

我々に歯向かう度胸もない貴様がか?」

「決闘ショーのおかげで戦いには慣れた。

ぼくはもう逃げない!!」


力強い決意を叫んだピュートーンに

竜達は激怒し、一斉に襲いかかった。

最早、その瞳に理性の輝きはない。


竜達の咆哮が、山を大きく震わせた。



立ち塞がる竜達を倒し、

ようやくのことで

一族の住み処に辿り着けばーー


そこにあったのは、破壊し尽くされた艦。

血溜まりに沈む巨大な竜達の亡骸。


そして、我を忘れて暴れる一匹の竜の姿。


「あそこデ暴れている竜ハもしかして

ピュートーンではナイですカ?」

「おやおや、少シ見ないうちに

更に醜クなってしまいまシタね」


どうやう人形達の声が届いたようだ。

ピュートーンは一際大きな声で吼えた。



大暴れした末に気絶したピュートーンは

日覚めるとガタガタと震えだした。

「ぼくは、なんてことを……」


一族の亡骸を見て、ピュートーンは

大粒の涙を流した。

そんな彼を、生き残った竜達は物陰から

息を殺して見つめていた。


「こんなこと、するつもりじゃなかった。

ごめんなさい…」

謝罪に応える者は誰もいない。

ピュートーンはさめざめと泣きながら

故郷の山を後にした。



数日後、決闘小屋へ帰った

ピュートーンを待っていたのは、

労りの言葉でも優しい言葉でもなくーー


「おやおや、ここまで醜くなられると

客もドン引きじゃないか。

これじゃショーには出せないね」


オーナーの吐き捨てるような一言と、

優しかったスタッフ達の

虫ケラを見るような凍り付いた視線。


「代わりのヤツを見つけたから

お前はもう必要ないよ」

そう付け足して、オーナーは嘲笑った。



「必要ないなんて言わないで。

なんでもするかう、追い出さないで」


泣き伏せて懇願するピュートーンを、

オーナーは面倒そうに見下ろしたが……

やがて彼は、何かを閃いたようだった。


張り付いた笑みを浮かべ、

泣き暮れるピュートーンを覗き込み

オーナーは猫撫で声を出す。


「本当になんでもできるかい?

それならもう一度だけ、

お前を必要としてもいいけどね」



ぼくに与えられた新たな仕事。

それは、決闘小屋の賭けに負けた

お客さんのストレス発散に付き合うこと。


牙を抜かれ、足枷を嵌め、鎖で繋がれて、


「絶対に

抵抗しない

サンドバッグ』


として暴行を受け、罵詈雑言を浴びる。


やがて片目を失って、片足が折れて、

毎日大量の血を吐くようになった。

でも、オーナーとスタッフは毎日優しい。


ぼくは必要とされてる。

ぼくの居場所はここなんだ。

だから、ぼくは平気。



山に残された竜の一族は

ストレスを発散できずに

怒りを撤き散らし、仲間向士で、

壮絶な殺し合いの未に滅んだ。


決闘小屋のオーナーは

キューティーちゃんの連勝によって

賭けが成立しなくなって破産。

借金苦のため決開小屋に火を放ち、

焼死した。


鼓膜が破れて音も聞こえず、神経が死に、

痛みすら感じなくなったピュートーン。

彼にとって罵詈雑言は励ましに、

傷による血の滴りは、

ぬくもりに感じられた。

そして醜い相貌に笑顔を浮かべ、

彼は最期の時を迎えた。


















ギシン アンキ 締めの会話

ギシン「そして誰モいなくナッタとさ」

アンキ「めでたシめでたシ」

ギシン「しかし本当におめでたいデスね」

ギシン「アノ決闘小屋には随分ト稼がせてもらいまシタ」

アンキ「ボロ儲けで笑いガ止まりませんヨ」

ギシン「それにしてもアノ竜は愚かな選択ヲしましたネ」

ギシン「故郷から一度ハ逃げ出したヨウに」

ギシン「決闘小屋カラもさっさト逃げ出せば良かったノに」

アンキ「自分を貶める振る舞いヲしてくるヤツとは」

アンキ「無理に付き合わナイほうガイイなにね?」

ギシン「アンナ目に遭っても必要トされたいなんて」

ギシン「救いがたい愚か者デス」

アンキ「あなたハせいぜい同じヨウナ選択ヲせず」

ギシン「モット生きて足掻いて」

ギシン、アンキ「我々ヲ長い間楽しませてクダサイね」





















感想
今回も相変わらずのバットエンドでした。

ピュートーンはもっと周りに恵まれれば違った未来があったのかも知れませんね。

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